製薬企業の研究職ってどんな仕事?

製薬業界の解説
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はじめまして、製薬企業で勤務しております、tabeと申します!
博士課程を修了し、現在は製薬企業にて研究職として勤務しています。

当記事では、日頃からよく問い合わせのある
「製薬企業の研究職ってどんな仕事なの?」というお題について書いていきたいと思います!

「大学院を修了した後の進路を考えたい、でも働く姿がイメージできない…」という悩みを
私自身が学生の頃抱えていました。そんな方々に少しでも情報が提供できれば幸いです。

当記事の前提として、私は薬理研究者として勤務をしております。
主にはその場所から眺めた景色を書いていきます。
よくある「研究者の1日」みたいな書き方もできるのですが、
日々の業務や目的はその日ごと、役割ごとに大きく変わりますし、
当記事では「役割ごとの仕事内容」という切り口で見ていきたいと思います。

別の観点からも記事を書いておりますので、こちらもぜひ開いてみてください。

「プロジェクトメンバー」としての仕事

入社直後は特にそうですが、多くの方は様々なプロジェクトのメンバーとしての研究を行います。

各プロジェクトでは既に創薬コンセプトがある程度決まっていて、
薬の実現に向けて多くの方々が一丸となって研究を推進していきます。

後述の「リーダー」を担当していても、別プロジェクトのメンバーを並行して担当する事が多いです。

プロジェクトにはすでに薬理だけでなく、様々な部署の方々がアサインされています。
例えばケミストの方だったり、安全性の方だったり色々です。

この中で薬理の人は、ケミストやモダリティ担当の方が作った「モノ」について
薬効を評価するための評価系を立ち上げ、実際に評価し結果を出してきます。

一言で評価系と言っても本当に奥深くて、
「ヒトで薬効を示すものをどうすればそのモデルで選抜できるのか?」
を追求していきます。答えなんてあるのか…!?という思いにすらなります。

「もしかしたらこうなのかも?」と生命現象をとことん考えていく時間がとれるほど
個人的に仕事は楽しいです。

あとは、自分と全くバックグラウンドの異なる多くの研究者と語り合えることも
企業研究者の魅力だと思っています。
売られていない化合物や抗体を準備してもらえたり、
アカデミアとはまた違った研究ができる側面もあったりします。

研究室でも「このモデルでどこまで主張が語れるか」をよく考えると思いますが、
イメージとしてはその状況とかなり近いです。

実際の業務内容ですが、課題解決に向けての論文調査や実験がメインとなります。
「解決すべき課題」はある程度指示されるケースもありますが、
潜在的なリスクや課題の提案もしていきますし、
どのように解決するかなどはかなり自由に発想したり検証したりできます。

ラボ生活とすごく近いことを仕事としますが、ちゃんと定時で帰ることができます。笑
むしろたくさん実験したい人は、コンパクトに業務を進めることも大切な能力になります。

プロジェクトにも運にもよりますが、論文や特許として研究を公表することもあります。

よく就活でも耳にする「新規提案」

就活中にもいろんな人が「新規提案します」というモチベーションを表明しますが、
実際に新規提案とは何か、ぼんやりした理解でこの言葉を使っている人が多い印象です。

私も正直よく分からず、入社後に色々新しいことを提案したいなくらいの理解でした。
そこでもう少し、新規提案について掘り下げていきたいと思います。

創薬研究における新規提案は、こんなコンセプトや標的で薬が創り出せないか?
という発想から新しいプロジェクト・企画を提案し、
それに対しより大きなお金と担当者を付けることをエライ人に合意させる行為を指します。

上述した別プロジェクトのメンバーとしての業務など、いろんな仕事の傍らで
論文調査をしたり、自分や仲間らとデータを集めながらこの提案を目指します。
メンバーとしての仕事よりも、高い自発性や自律性が求められます。

各社、この提案が承認されるときのハードルの高さは結構違うような話を聞きますが、
ちょっとしたデータがあれば良いというものではありません。

・競合他社のパイプラインや非臨床研究の把握と自社でやる上での勝ち筋
・プロジェクトを進めるか止めるかを確認するための基準設定
・提案時点で考えられうるアンメットニーズに対して提供できる価値

などを盛り込み、自分自身の持つデータも組み込んだ形で上司を説得する必要があります。

大学院生の特に培ってきた研究全体の構想力、実行力、
論理的に大きなプランを描き切る力が試される行為になります。

(大学院ではぜひ目の前の研究を題材に、この能力を伸ばすことを意識すると良いと思います!)

難しく感じる事も多いですが、チャレンジするだけでもたくさんの学びがありますし、
何より自分自身が世の中に提供したい薬をゼロから生み出すきっかけになります。
個人的にはタフさ以上に夢のあるチャレンジだなと思っています。

ここでは多く語りませんが、敵(⁉︎)も多いので結構大変です。(遠い目

「プロジェクトリーダー」としての仕事

自身で提案したものや、時には他社からの導入品について、
早い人は入社数年以内にリーダーとしての役割を担うことがあります。

プロジェクトのリーダーは、
提案や導入時点で会社側と合意されたプランに対して順調にプロジェクトが進むよう、
アサインされた他のメンバーらと共にプロジェクトを育てていきます。

・臨床入りに向けた課題に対して大きな解決方針を現場メンバーに示す
(リーダーさん次第なところもありますが、一緒に実験ももちろんやる。)
プロジェクトの進捗を把握しながら、ケミストやモダリティ、
 安全性担当部署の代表者へ結果を共有し、今後の方針を決定する
・会社側と合意した進捗確認時期に状況をまとめて報告し、進めるか否かの方針を相談する

このように現場メンバーとだけではなく、様々な部署との連携役として、
プロジェクト全体を俯瞰した立ち回りが要求されます。

臨床入りに近いプロジェクトになるほど、関わるメンバーも動くお金も大きくなってくるため、
リーダーさんの調査や説明資料作成・説明の業務量は増える傾向があり、
現場でゴリゴリと実験をするタイプではなくなる人もいます

リーダーもやりたいけど、もっと実験室で実験をしたいんだ!という人はモドカシイかも?
ある意味ラボでの助教や准教授の先生も似た悩みを持っている方がいるかもしれません。

まとめ

細かい話を始めるとキリがないのですが、
ざっくりと役割ベースでどんな業務をこなしていくのかを書いてみました。

どれか一つを担うというケースはほとんどなく、
皆さん複数のプロジェクトに入りながら、新規提案ネタを温めたり、
その中でリーダーをしている方もいるようなイメージです。

当記事から、少しでも企業で働くことのイメージを持っていただければ大変嬉しいですし、
自分に合っていると思う方はぜひ積極的に製薬企業を応募してみてください!

また、「こんなことが知りたい」という要望がありましたら、
Twitterアカウントなどを通じて気軽にご連絡ください!

当ブログでは色々と製薬企業・大学院生の就活を中心に記事を書いておりますので、
他の記事もご覧いただければ幸いです

ではではー。

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